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子どもをつくること自体が生活水準の大幅な低下、ひいては貧困化につながり、半永久的な生活保護受給生活者を生産していくアメリカ社会と異なり、親の扶養ならびに養育責任が確立し、しかも子どもの経済的水準の保障がされた社会を構築した、スウェーデンの家族政策のもたらす意義は大きい。今日の出生率低下も、したがって1930年代の人口問題の危機と同じ質の危機感はないといえる。それは、90年代を襲った経済的不況を原因とする失業問題などの社会的不安による一時的なリアクションと思われる。さまざまな分析が示すように、スウェーデン人の家族形成に対する考え方や理想とする子ども数に変化はおきていないからである。ただ、失業の長期化などによる経済的自立がおびやかされ、出産年齢の高齢化がさらに引き延ばされて、子どもを生まない割合が増えることは一時的に考えられる。
福祉国家という、すべての人に対して生活の安全と一定の生活水準を保障する社会制度が家族政策の大きなバックボーンにあることも、はかりしれない重要な意味をもつ。しかし、スウェーデン福祉国家においていう生活の安全とは、人々の自立を前提にしたそれであり、自立に対する社会の援助という原点が家族政策の発展をみるなかでも明確になったことである。

 

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スキー学校で 2月のスポーツ休暇

 

 

 

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